In the Beginning

2017年、抽象画を描きたいと新たな挑戦を始めました。きっかけは当時、フォトグラファーとして13年のキャリアを重ねながらも、何かしらの限界を感じていたこと。締切や予算、クライアントの要望に応え続ける中で、安定した品質のコンテンツを生み出す自信は培われたと思いましたが『本当にこれが自分の創作の全てなのか』という疑問が拭えず、心の奥底ではさらなる可能性を模索していました。

デジタルの世界で作品を制作する中で、修正の容易さが、知らず知らずのうちに失敗を恐れる気持ちを大きくしていたのだとも思います。だからこそ、新しい領域に踏み出し、失敗を恐れずにもう一度自分自身と向き合いたいと思いました。「なぜ創るのか？」そして、「何を伝えたいのか？」自分に問いかける中で、幼い頃から私の心に宿っていた『光』『色』『動き』への関心を、キャンバスという形で表現し始めたのがその第一歩です。それからは時間を見つけては毎日絵を描き続け、気がつけば仕事場は絵の具で溢れかえる日々が続きました。

Pixels & Paintsの原点は、新たな挑戦を始めた2017年、その年のある朝のことです。撮影で訪れたフロリダでの朝、窓越しに見た海面に映る朝焼けが、心を揺さぶりました。光と色が織りなす絶え間ない変化の美しさを目の当たりにした瞬間、それがまるで自分が描いた抽象画のようだと感じたのです。しかし、実際にはその逆であることにも気付きました。私の作品は、自然の美しさを追い求める中で生まれた表現だったのです。

それ以来、自然の中で見つけた『抽象画』を写真に収めることが新たな喜びとなりました。それを通じて、創作の本質――純粋にものづくりを楽しむ感覚――を再発見することができました。ただし、当時はこの作品群を発表や公開をするということは考えていませんでした。

早朝に撮影を終えて帰宅した後、朝焼けの美しさに心を奪われながら時間を忘れて撮影したり、登山中に岩や地面の模様に没頭して置き去りにされることもありました。その結果、タンザニアのキリマンジャロ山頂からエクアドルの砂浜、東京の空、南アフリカの大地、奄美大島の岩場まで、世界各地で撮影した作品が自然と積み重なっていきました。

この度のコレクション発表を機に、これまでの制作物を振り返り、新たな作品を制作することが、自分のものづくり原点を見つめ直す機会ともなりました。14歳でフォトグラファーとしてのキャリアをスタートさせた頃から変わらず胸に抱き続けているのは、光と影が紡ぎ出す形、動き、そして物語への深い愛情です。Pixels & Paintsは、光を追い求め、試行錯誤を重ね続けた20年間の軌跡の集大成と言えるかもしれません。

- Miwaza Jemimah